始まりのおわり
前回の続き・・・
6月某日、約束の日。
いつもの駅の改札を出た。
あいかわらず、七夕飾りが風に揺れている。
小さい駅なので出口は一つ。
見渡しても10人前後の乗降客しかいない。
みぃさんは見当たらなかった。
ふぅ。
「そらそうだよな。そんな甘くないよな。」
未練がましく、タバコに火をつけ2〜3本ほど下り電車を待ってみた。
来ない。
時計を確認するとそろそろ予約時間。
諦めて歩きだそうとしたとき、目の前に一台の原チャリが止まった。ヘルメットを取りながら、息を切らせた人に声を掛けられた。
みぃ「マイちゃんだよね?遅くなってゴメン!!」
この呼び方はみぃさん以外、家族と親戚しかしない。
マイ「みぃさん、久しぶり。なんやバイクなんか。忙しそうやな。無理して来んでもよかったのに。もう、病院の予約時間やから行かなあかんし。」
内心は凄く嬉しかったのに余裕で高飛車な態度をしてしまう。
この態度が災いして27年前にみぃさんに振られたのに・・・
お世辞にも万人から美人とは言われないけど、ショートカットが似合う小顔の可愛い系のみぃさん。
変わってない。いや、昔は自信なさげなある意味卑屈な感じの笑顔が、今は母となって慈愛のある自信に満ちた笑顔に感じた。
みぃ「どこが悪いん?痛くない?大丈夫?待っててくれたん?じゃあ、ゆっくりしゃべれへんね。じゃあ、今度、ゆっくりお茶でもしようよ。」
マイ「・・・うん。でも、よう来てくれたな?」
みぃ「なんか今日会えへんかったら、マイちゃんと一生会えへん気がしたから。いつやったら会える?」
マイ「・・えっと、2週間に一回ぐらい通院してるから、再来週の〇曜日の通院前やったらいつもより早めに早退して時間つくれんこともないけど・・・」
みぃ「じゃあ、再来週の〇曜日〇〇時ごろにしよっ。△△駅についたらメールして。じゃあ、晩御飯用意せんとあかんから帰るね。じゃあね。」
原チャリを飛ばして去っていってしまった。
マイ「・・はい。また・・・」
ひさしぶりにあったみぃさんは、思い出の中のイメージとは違っていた。それもいい方向に。その上、次に会う約束もできてしまった。
いつのまにか、ここ十何日間の悶々とした気持ちがどこかに吹かれていき、初デートを指折り数えて待つ高校生と変わらない自分がいることに気付いた。
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